腰痛・ぎっくり腰

■腰痛って?

 痛みの原因(由来)が特定できないものが多い

 腰痛には医学的に確立された定義がなく、現代の医学をしても解明されていない点が多い疾患のひとつです。「腰痛」という名称自体は病名ではなく、腰部を主とした痛みや張りなどの不快感といった「症状の総称」です。腰痛は、まずその原因(何の組織が障害されて生じたのか、痛みの由来)の有無によって、「特異的」腰痛と「非特異的」腰痛に大別されます。医師の診察および画像検査(X 線撮影や MRI など)によって腰痛の原因が特定できるものを「特異的」腰痛と呼び、厳密な原因が特定できないものを「非特異的」腰痛と呼ばれます。非特異的腰痛は、病名としては「腰痛症」といい、統計では、腰痛を訴える患者さんの約 85%は、この非特異的腰痛、いわゆる「腰痛症」が占めます。

 腰痛の生涯有病率は83%との調査結果があり、それほど高い確率でが経験する(多くの人が経験する)ものでありながら、厳密な原因を特定できない非特異的腰痛、いわゆる「腰痛症」が約85%を占めているという事実が、腰痛の不可思議さをあらわしています。

 

 ここでは、いわゆる「ギックリ腰」のような、急に生じた非特異的腰痛(以下「急性腰痛症」)を中心に、腰痛について私の臨床経験をもとにお話をしたいと思います。

 

 急性腰痛症の症状と経過

 痛む部位は、必ずしも腰部だけとは限らず、(末梢神経障害を併発する腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症でなくても)臀部や鼡径部、時には、腰から遠く離れた大腿部や膝、下腿部や足部にまで訴える場合があります。疼痛を自覚する場面は「立ち上がる」「歩く」「体を前に屈める」といった動作時だけではなく、「立っているだけで」「座っていても」、時には「夜寝ている時に」といったように安静時にも痛みを訴える場合があります。

痛みの程度は、発症直後が最も強い場合が多いですが、しばしば、発症直後よりも数日後に痛みのピークを迎えることもあります。発症から1週間前後は、鋭く強い痛みが続きますが、概ね2週間を経過すると、鈍く重い痛みに変化します。

 早期に適切な加療と安静を得ることによって、急性期は右肩上がりに改善を自覚することができます。発症から2週間程度経過した回復期は、日によって好不調の波があり、その好不調の波を繰り返しながら全体的に少しずつ上向いていくという経過を辿ります。継続的な加療によって、1カ月半程度で症状は消失し、全快します。

■腰痛になる原因(発症要因)は?

 直接的原因(発症要因)は解らない

 「重い物を持ち上げて」というように腰に強い負荷がかかって発症する場合もありますが、「物を持ち上げようと体を屈めたら」「椅子から立ち上がろうとしたら」「くしゃみをしたら」といった些細な動作で発症する場合の方が圧倒的に多いように思われます。同じ動作をしても発症する人としない人とがいて、同じ人(個体)であっても同じ動作で発症する場合としない場合とがあり、必ずしも動作や姿勢自体が直接的原因にはなっていないことが判ります。

 問診や何気ない会話のやりとりで垣間見えるその人の生活背景からは、単一の要因ではなく、複数の要因が複合的に作用して腰痛を生じたことが推測されます。多忙で適度な運動を行う時間的余裕がないこと、同一姿勢(特に坐位)を長時間続けなければならない就労環境にあること、全身状態が低調にあること、また、本人が自覚していない(そのことがストレスになっているとは認識していない)心理的ストレスを抱えていること、などが推測されますが、それらはいずれも一朝一夕に解決できるものではなく、それを解消することが現実的ではないケースがほとんどです。

■及川接骨院での施術方法は?

 

 腰痛症の根治療法はない

 疼痛の由来が明確である特異的腰痛(腫瘍・感染・外傷によって生じた炎症による腰痛や、腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・脊椎すべり症等の腰椎疾患)に対しては外科的根治療法が存在ます。しかしながら、腰痛の由来が明らかでない非特異的腰痛、いわゆる「腰痛症」に対しては、痛みや痛みよって生じた筋緊張を緩和する対症療法が主で、一度治療すれば二度と腰痛にならないという根治療法がありません。当院の施術も当然ながら対症療法で、電気療法や冷却・温熱療法、手技療法、といった物理刺激による療法(物理療法)を行います。

 

 急性腰痛症に対する施術の肝

 様々な症候を呈する急性腰痛症ですが、共通してみられる「ある徴候」があります。それは、骨盤の後傾と腰椎の生理的前彎の減少で、肉眼的観察所見では「へっぴり腰」の状態、患者さんの訴えでは「腰が伸びない」「背筋を伸ばせない」という状態を指します。この徴候を生む要因は、仙腸靱帯(骨盤を構成する仙骨と腸骨とを連結する靱帯)と腸腰筋(腰椎に始まり腸骨の内側に停止する大腰筋と、腸骨の内側に始まり大腿骨の内側に停止する腸骨筋から構成される筋)の過緊張にあるのではないかと考えていて、この状態を解消することを施術の肝としていてます。

 

 初期処置が重要

 発症後、速やかに加療した場合とそうでない(放置した)場合とでは、痛みの緩和に要する日数に明らかな差が出ます。発症直後から施術を継続して行った例では、2~3日後で痛みの程度は半分以下に、1週間後には1/3程度に緩和されますが、放置例では、放置した日数に比例するように痛みの緩和に時間を要します。

 

 回復期には安静よりも運動が必要

 発症直後から2週間程度は患部の安静が必要ですが、必要以上の過度の安静はかえって回復を遅らせる原因と考えています。2週間程度経過して、日常生活動作で鋭い痛みを感じることがなくなり、重く鈍い痛みを感じるようになったら、段階的に身体を動かすこと(運動)を奨めています。

 

 施術と同じくらい大事なこと

 また、重要なのは自己療養(セルフケア)と日常生活動作に対する指導管理です。患者さんが施術を受けるのはたかだか30分程度でしかなく、それ以外の多くの時間、腰痛を抱えながら生活しなくてはならないからです。腰痛と上手く折り合いをつけながら必要最低限の生活を維持するために、腰痛バンドの適切な装着方法、痛みを感じることが少ない動作・座り方等を指導いたします。

 

 セルフケアには運動療法が一番

 急性腰痛症は必ず全快しますが、再発を免れることができません。根治療法はありませんが、(労働ではない)運動の習慣をつけること、すなわち運動療法が再発の頻度を下げる効果があることが知られています。「腰痛に効くお勧めの運動は何ですか?」とご質問をいただくことがあるのですが、「適度に息があがり、適度に汗をかくことができて、それをすること自体が楽しくて、気持ちがリフレッシュできるもの」と答えています。やって楽しいと思えるものが、自然と回数が増えて習慣化し、長く続けることができるからです。