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スポーツによるケガ

■「スポーツによるケガ」って?

 

 スポーツ中に起きたケガを「スポーツ外傷」として、また、継続的なスポーツ活動によって生じる身体的故障を「スポーツ障害」として分類し、それらを総じて「スポーツ傷害」と呼びます。

 

 私もスポーツでケガや故障をした経験があり、接骨院にかかって、後の師匠となる先生と出会ったことが今の仕事に就くきっかけになっています。それだけに「スポーツ傷害」については思い入れがあるのですが、インターネット上で既に「スポーツ傷害」に関する情報が溢れていまので、個々の症例については割愛します。

ここでは、私がスポーツとスポーツ傷害をどのように考えているかということについて述べます。

 

■私の考える「スポーツ」と「スポーツ傷害」

 

 スポーツは健康に良い?

 我が国の「スポーツ基本法」という法律では、スポーツを「心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動」と定義しています。 つまり、社会通念として「スポーツは健康に良い」と考えられている訳ですが、誤解を恐れずに言えば「スポーツは一生懸命やればやるほど身体には良くない」と私は考えています。

確かに、「適度な運動」が健康に良いことは科学的に証明されていますが、激しい運動や過酷なトレーニングが免疫力の低下を招いて感染症にかかりやすくなることもよく知られており、「女性アスリートの三主徴」(体内の必要なエネルギー(特に体脂肪)の減少、無月経、骨粗鬆症)がスポーツ医学の健康管理上の問題となっています。

 

 スポーツ傷害が心身にもたらすもの

 常に身体のケアをしているトップレベルのスポーツ選手でさえ、ケガや故障は避けられないように「スポーツにケガはつきもの」とも言われます。中には、ケガや故障したことを自身の身体を見直す「好機」と捉え、リハビリや新たなトレーニングに取り組み、復帰後も活躍できる選手がいますが、不運なケガに泣いたり、度重なる故障に苦しんだりする選手も多く、復帰後もパフォーマンスレベルが戻らないことや、そのスポーツから離れていってしまうといった「挫折」を経験する選手が少なくありません。

 

 スポーツが持つ性質

 スポーツには「体を動かすという人間の本源的な欲求に応え、精神的充足をもたらす」 という性質があることは勿論のことですが、健康障害をもたらす危険性があることや、時にケガや故障に見舞われることも、スポーツが持つ性質であり、その全てを含めてスポーツであると捉えることが重要と考えます。選手だけでなく、スポーツに関わる全ての人が「スポーツすることだけではなく、健康障害やスポーツ傷害に対処することもスポーツである」と考えることができるようになれば、悩んだり苦しんだりしてスポーツから離れていってしまう選手が少なくなるのではないかと思っています。

 

■及川接骨院を訪れるスポーツ傷害例とその対応

 

 「藁をもつかむ」思いで来院

 「ケガを治すのであれば休養・療養が必要で、スポーツを続けるなどご法度」と指導するのは簡単ですが、スポーツでケガや故障をした患者さんは「週末に大事な試合があるんです」あるいは「レギュラーメンバーに選ばれたばかりなんです」という差し迫った状況で来院されるケースがほとんどです。「痛みを我慢してでも試合に出たい」「レギュラーから外されたくないから休まずに練習を続けたい」という切実な思いで来院されます。

 

 施療よりも大事なこと

 ケガや故障の状態を評価することの次に大事なことは、プレーを続けることで、ケガや故障の状態が悪化するだけでなく、「将来的にどのような後遺症が生じる可能性があるか」を、患者さんに(未成年であれば保護者の方にも)説明し、正しく理解してもらうことです。そして、ケガや故障をした状態でプレーすることのデメリット(肉体的負担)と、悪化してでもプレーすることのメリット(精神的充足)とを天秤をかけ、決意してもらうのです。

 

 応急処置と指導管理

「それでも試合に出る」と決意した患者さんには、試合に出場可能な材料(※競技によって使用が許可されない材質があります)を使い、プレーを極力妨げない、応急的固定をします。

「それでも練習を続ける」と決意した患者さんには、(練習で忙しく、そもそも継続的に施療を受けることが困難な状況にある為)応急処置よりも、適切なサポーターの選択やテーピングの巻き方、セルフケアの方法や日常生活上の注意点等の指導管理が重要になります。

 

 スポーツとスポーツ後の人生を考える

 ケガや故障をした状態でプレーを続けることを全て容認する訳ではありません。そのスポーツを長く続けていくことの障害となるだけでなく、スポーツを辞めた後の人生の質(QOL : quality of life)を低下させることが明らかな症例では、休養と療養を強く勧め、説得を試みます。

代表的な例は、野球肘(離断性骨軟骨炎例)、野球肩(腱板、関節唇損傷例)、膝内障(十字靱帯、半月板、骨軟骨損傷例)です。これらは将来的に、しかも早期に、変形性関節症等の致命的な関節機能障害へと進展していく可能性が高いからです。休養と療養で改善が期待できる症例は施術(保存療法)を行いますが、保存療法では改善の見込みがないと判断される状態にある症例では、手術療法を勧め、専門医を紹介します。

リスクを重々承知したで上、それでもプレーを続けることを選択する方がいらっしゃいますが、その選択もまた、その方にとってのスポーツなのだと理解し、少しでもその手助けができたらと思っています。

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